なぜ直接、大型二輪免許を取れないのか

昨夜、2ちゃんねる改め5ちゃんねるを見ていたら、「なぜ直接、大型二輪免許を取れないのか」という問題提起をしている人がいました。ライダーの力量的に不可能とか、教習所を儲けさせるためとか、いろいろな意見が出ていました。

決して広くない教習所で、他にも受講者がいる中、素人がいきなり大型二輪を乗り回すのは危険、というのが一番の理由だと私は思いました。あるいは、かつて大型二輪免許は試験場でしか取れなかったことと関係しているのでしょうか。

正解を求めて、運転免許と教習所の根拠法令「道路交通法」を読んでみました。

(1)自動車教習所とは、「免許を受けようとする者に対し、自動車の運転に関する技能及び知識について教習を行う施設」(98条1項)であって、公安委員会に届け出て(98条2項)、指定(99条1項)を受けた教習所だけが、技能検定を行うことができます(99条の5・1項)。

(2)教習所は、技能検定の合格者に対し、卒業証明書または修了証明書を発行します(99条の5・5項)。証明書の所有者は、「運転について必要な技能」についての運転免許試験を免除されます(97条の2・1項2号)。

(3)教習所の教官は、「技能検定員」と「教習指導員」に分かれます。前者は、技能検定員資格者証の交付を受けて、技能検定を行います(99条の2)。後者は、教習指導員資格者証の交付を受けて、自動車の運転に関する技能および知識の教習を行います(99条の3)。なお、資格者証は公安委員会が発行します。

(4)指定を受けた教習所が行う教習の科目、科目ごとの教習時間、科目ごとの教習方法は、道路交通法の施行規則に定められています(施行令35条3項1号)。詳細は、道路交通法の施行規則の別表に定められています(施行規則33条1項)。

(5)必要な教習時間は次のとおりです。以下、分かりやすいので、「普通二輪免許」と書かずに「中型二輪免許」と書きます。また、学科(一)とは「応用走行を行うために必要な知識の教習」、学科(二)とは「自動車の運転に必要な知識の教習」のことです。

①中型二輪免許を受けた者が大型二輪免許の教習を受ける場合

(技能教習)基本操作および基本走行5時限、応用走行7時限、計12時限
(学科教習)学科(一)0時限、学科(二)0時限、計0時限

②免許を受けていない者が大型二輪免許の教習を受ける場合

(技能教習)基本操作および基本走行16時限、応用走行20時限、計36時限
(学科教習)学科(一)10時限、学科(二)16時限、計26時限

③免許を受けていない者が中型二輪免許の教習を受ける場合

(技能教習)基本操作および基本走行9時限、応用走行10時限、計19時限
(学科教習)学科(一)10時限、学科(二)16時限、計26時限

(結論)以上(5)①②③から、掲示板で邪推されていたような陰謀論など、全くなかったことが分かります。

道路交通法上は、直接、大型二輪免許を取ることは可能であるものの、技能教習を余計に5時限受けなければならないため、受講者の側にそのコースを選択する経済的な理由がない、というのが正解のようです。おそらく教習所の窓口にねじ込んでも、同じような説明が行われる筈。